AI支援によるジュエリーデザイン:創作上の判断を下すのは誰か?
AIで生成したJEWEL DAILY独自の編集用イラスト。架空のリングのスケッチとワイヤーフレームを通じて、人による創作上の判断とAI支援によるジュエリーデザインを表現している。実在商品の写真でもCIBJO制作の画像でもない。AI編集イメージCIBJOの倫理報告書は、生成AI、知的財産、社内ガバナンスを検討する。ジュエリー工房にとって実務上の示唆は、参考資料、人による判断、承認の過程を、後から確認できる記録として残すことだ。
報告書の焦点は著作者性と責任
7月30日に公表されたCIBJO倫理委員会の報告書は、ジュエリーデザイン、CAD、レンダリングにおける生成AIの利用を検討している。人が創作上の選択を主導する仕事と、表現の多くをシステムが決める生成物を区別し、他者の知的財産を尊重する社内ルールの整備を求めている。
創作上の判断を実務に役立つ記録として残す
各プロジェクトで、参考資料の出典、許可された用途、人による修正、最終承認をまとめて残すことが重要だと私たちは考える。その記録があれば、工房はデザインがどのように生まれたのかを説明でき、製造や顧客への提示に先立って誰が確認したのかも明確にできる。
オーダーメイドの仕事でも、どの工程でAIを使ってよいか、どのファイルを外部ツールに提出できるかについて、明確な共通認識が必要だ。デザイナー個人にすべての疑問の解決を委ねるより、一貫した確認工程を設ける方が実行しやすい。報告書は業界向けの指針であり、個別の法的義務は該当する法域と契約によって異なる。
レポート全文
CIBJO · 倫理委員会 · By Sara Yood · President, Ethics Commission · 2026-07-30
特別報告
倫理
この画像はすべて生成AIを使用して制作したものです。
知的財産と生成AIが
人にもたらす影響
執筆:Sara Yood
委員長
倫理委員会
CIBJO倫理委員会は、誠実さ、透明性、消費者の信頼を幅広く扱っています。本報告書では、知的財産権と、生成AI(GenAI)がそれに及ぼし得る影響を検討します。
用語を明確にしておくと、人工知能(AI)は機械を賢くするための広い科学分野であり、生成AI(GenAI)はその特定の一分野で、コード、文章、画像、実際の設計図など、新しいコンテンツの創作に重点を置いています。
まず、知的財産法は法域によって大きく異なるため、あらゆる細かな違いを網羅することはできないと申し添えておきます。そのため、本報告書は倫理面および政策面の提言に焦点を当てます。
この1年、企業は事業の改善と迅速化を目指し、バリューチェーン全体で生成AIを利用するようになっています。こうしたツールは確かに人の創造力を広げ、成果物を増やせますが、根本的な緊張関係を生む可能性もあります。生成AIは創造性を流用し、模倣し、あるいは見えにくくすることもできるからです。
倫理にかなった生成AIの利用は、デザイナー、職人、写真家、ブランド、その他の人間の創作者の知的財産権を損なってはなりません。そのためには、形式的な法令遵守だけでは不十分です。企業は引き続き、透明性、著作者の尊重、実質的な人間の監督、明確な説明責任を重視しなければなりません。
生成AIは、人の信頼に取って代わるのではなく、それを強めるための道具であるべきです。人間の創造力を中心に据え続けることで、ジュエリー業界は信頼を維持しながら、技術を活用して進化を続けられます。
この画像はすべて生成AIを使用して制作したものです。
ジュエリーのライフサイクルにおける生成AIの役割は進化を続けている
生成AIはすでにジュエリー業界の工程改善に使われています。市場評価額が上昇し続けていることを考えれば、これは驚くことではありません。[2]テクノロジー企業も、自社のソフトウェア全体に生成AIモデルを標準で組み込むことを引き続き優先しており、これが全体的な普及を促す可能性があります。
初期の単純な文章生成モデルをはるかに超えて、企業は次の用途に生成AIを活用しています。
- コンセプト開発とジュエリーデザイン
- CADモデル、レンダリング、カスタマイズ
- 商品写真
- 仮想モデリングと試着体験
- 広告文、ソーシャルメディア、キャンペーン画像
- トレンド予測
- 製造と生産の最適化
- 真贋判定、権利侵害の検出、模倣品対策
人が創作上の意思決定者であり続けるAI支援による作品と、システムが表現結果の多くを決定するAI生成の作品には、根本的な違いがあります。
この区別は、著作者性や権利帰属の問題にとってますます重要になっています。例えば米国著作権局は、人が創作した要素への保護を認める一方、AIへのプロンプトだけでは通常、人が出力を十分に制御しているとはいえず、そのため著作権保護の対象にはならないと結論付けています。[3]
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知的財産の枠組みは今も重要だが、課題は残る
生成AIの急速な普及にもかかわらず、知的財産法は依然として存在し、知的成果をどう評価し保護するかを規定しています。
ジュエリー業界に関わる知的財産の主要な三分野、すなわち著作権、特許、商標は、引き続き尊重されなければなりません。場合によっては、モチーフ、技法、模様、文化遺産を含む伝統的文化表現のように、通常の知的財産法では十分に保護されない創造性の側面もあります。それでも、倫理的な尊重に値することに変わりはありません。
AIの問題の一つは、現時点では事実上ほとんど規制されていないことです。つまり、企業がどのようにアルゴリズムを構築しているのか、どこから情報を調達しているのか、著作権で保護された素材での学習をどのように防いでいるのか、そもそも防いでいるのかについて、監督がほとんどありません。
法律が技術革新の速度に追い付けるかどうかには、大きな疑問があります。世界知的所有権機関(WIPO)は、生成AIに関する国際的な主要課題として、透明性、同意、著作者の明示、補償、拡張可能な権利管理システムを挙げています。[4]
この画像はすべて生成AIを使用して制作したものです。
ジュエリーデザインに生成AIを使う際に生じ得る落とし穴
生成AIモデルは膨大な量のデータで学習され、その中には保護されたデザイン、写真、文章が含まれる可能性があります。多くの創作者は、こうした利用に同意しておらず、著作者として明示されることも、補償を受けることもありません。
しかし生成AI企業は、人間が学ぶ方法と似ているため、こうした素材を使う権利があると主張しています。これはフェアユースの考え方に該当し、プログラムは保護された情報の違法な複製を保存するのではなく、保護の対象にならないパターンを抽出するものだと説明しています。
ただし、公にアクセスできるコンテンツが、必ずしも自由に複製、再利用、AIシステムへの投入をしてよいとは限りません。さらに、多くの法域では、権利者が権利を維持するためには積極的に保護することが法律で求められています。
保護されたコンテンツを生成AIにアップロードすることには大きなリスクがあります。ユーザーはモデルの無料版を使うのではなく、必ずライセンスを購入し、コンテンツを閉じた環境にとどめ、モデル自体の学習に使われないようにするべきです。
生成AIは著作権上の著作者にはなれないため、ジュエリーデザインに使うことにも現実的なリスクがあります。生成AIだけで制作されたデザインは著作権保護の要件を満たせず、誰でも利用できるものになってしまいます。
生成AIは、他のデザイナーの作品から「着想を得た」とする、よく似た品物のデザインに意図的に使われることもあります。他の作品から着想を得る行為が、どこで一線を越えて権利侵害になるのかを十分に理解するには、判例がまだあまりにも不足しています。既存のジュエリーデザインを再現する生成AIの出力は明らかに侵害ですが、既存のデザインに単に似ている出力については、非倫理的な行為者が追及を免れる可能性があります。
特定のデザイナーやブランドの「作風で」デザインするよう求めるプロンプトは使うべきではありません。これは権利侵害であるだけでなく、デザインの画一化や、独立したデザイナー・職人が仕事を奪われるという、より広範な害をもたらすおそれもあります。
この画像はすべて生成AIを使用して制作したものです。
倫理的で責任ある生成AIの枠組みを考える
企業の中で創造性と生成AIが出会うとき、私たちはどう扱うべきでしょうか。
過去40年間で、時代を先取りするには新技術を取り入れ、生産速度と規模の経済を常に高めなければならないという暗黙の了解が形成されてきました。しかし、人間が代償を払う場合もあり、雇用主には、従業員が新技術を取り入れる際に指導を受けられるようにする責任があります。
生成AI利用の倫理的な枠組みをどう実施するかを検討する際、企業は次の分野を扱う「職場のAI利用方針」の策定を検討するべきです。
- 人間の説明責任:AI、とりわけ生成AIのあらゆる商業利用について、社内の誰かが責任を持つべきです。
- 創作者の尊重:企業は、無許可の複製と意図的な模倣を禁止するべきです。
- 透明性:生成AIを実質的に利用し、それが著作者性、真正性、消費者の期待に影響し得る場合は、その利用を開示するべきです。
- 追跡可能性:企業は、ツール、プロンプト、元の素材の記録を保持するべきです。
- 環境への影響[5]:生成AIの利用では、エネルギーと水資源をどの程度消費するかを意識するべきです。
- 文化の尊重:伝統的なモチーフや文化的に重要なデザインを、出典を示さない学習素材や作風指定のプロンプトへと矮小化してはなりません。
- 消費者保護:生成AIの出力は、商品のデザイン、素材、職人技、由来について誤解を与えてはならず、通常求められる商品情報はすべて開示するべきです。
- 人間の創造力と尊厳:生成AIは、人の貢献を消し去るのではなく、人の能力を支えるべきです。
これらの原則は、AIのライフサイクル全体を通じて人間の責任、透明性、信頼性を重視するUNESCOの立場と一致しています。[6]上述の優先事項を扱う書面の方針では、従業員が利用を認められたプログラムを明示し、第三者の素材を無許可でアップロードすることを禁止するべきです。
許容されるAI利用のガバナンスの枠組みを整えることは、新しい生成AIシステムが市場に登場するたびに、企業が継続的に評価するための備えにもなります。
ただしジュエリー業界は、創造性こそが自らを支える確かな基盤であることを見失わずに、生成AIの技術革新を歓迎するべきです。創造性は無尽蔵の原材料ではありません。ジュエリー業界に携わる次の世代、そのまた次の世代を励ますためには、創造性を育み、大切に評価しなければなりません。
ジュエリー分野で生成AIが正当性を持てるかどうかは、人間の創造力、文化との結び付き、そしてジュエリーの価値の源である信頼を、損なうのではなく高められるかどうかにかかっています。
脚注
1.https://avalon.law.yale.edu/18th_century/anne_1710.asp
3.https://www.copyright.gov/ai/index.html
4.https://www.wipo.int/en/web/wipo-and-ai/resources-and-capacity-building
5. 本報告書で生成AIが環境に及ぼす大きな影響を認めないのは誤りでしょう。データセンターはエネルギーを消費し、その大部分は熱として放出されるため、生成AIを支えるデータセンターは冷却に大量の水を使い、既存の電力網に大きく依存しています。生成AI利用の環境影響を確実に考慮し、軽減することは、今後の重要な課題となります。参照:https://walkearth.org/wp-content/uploads/2026/06/unu-inweh-report-the_env_cost_of_ai-2026.pdf
6.https://www.unesco.org/en/legal-affairs/recommendation-ethics-artificial-intelligence


